導入することで生産性の向上や従業員の作業負担の軽減といった様々なメリットを期待できる溶接ロボットですが、適切なプランを検討しておかなければデメリットが大きくなってしまうリスクもあります。
溶接ロボットの作業特徴として、あらかじめ指定されている作業を同じように繰り返せるという再現性の高さがあります。その結果、それぞれの製品に対する溶接加工の品質も一定に保てるため、品質管理がスムーズに進められるという点は大きなメリットです。
また、作業員の熟練度や経験年数による品質差が生じにくいことも重要です。
金属溶接加工を取り扱っているA社では、職人の経験と技術力が品質を左右していたアルミニウム溶接加工について、属人性の解消を課題としていました。そこで多関節ロボットを導入してレーザー溶接加工をシステム化したところ、労働生産性が2倍に向上した上、エンジニアの不足が解消されて増産体制を構築することができたそうです。また、技術力をアピールすることで多分野進出も目指しています。
溶接工職人の高齢化によって人材の確保や将来的な作業体制に不安を抱えていたB社では、生産効率の向上を目指す事業戦略の一環として溶接ロボットの導入によるオートメーション化を行いました。その結果、作業者の技量によって品質に差があった溶接作業の仕上がりが安定化し、手直し工程が不要となって作業効率も向上したそうです。また、協力会社との連携もロボットの活用で促進されました。
あらかじめ適切な設定と調整を行っておくことで、対象の作業をロボットが自動的に進めてくれるため、人力で作業を進める場合よりも生産速度が向上します。クライアントの短納期ニーズへ応えやすくなる上、工数を削減してコストを圧縮できることも魅力です。
また、作業スピードを高められれば進捗管理を行う上でもメリットがあります。
建設部品の外観部溶接に関して、生産拠点を設置しているエリアの過疎化や職人の高齢化に伴い人手不足に陥っており、作業効率の不安定化や作業後の検査による工期の長期化といった問題が生じていました。そこで溶接ロボットシステムを導入したところ、全体の70%の自動化が叶ったことで作業の安定性が向上して、全体的な作業工程の時間が4時間から1.5時間まで短縮されました。
鍛造金型の製造を行っているC社では、鍛造金型の硬化肉盛り溶接について職人の手作業による作業を主体としていました。しかし、金型設計図を3DCADによって3Dデータ化し、さらにそれを再現するロボットシステムを導入した結果、作業の属人性を解消して専任者の削減が実現し、全体的な処理時間を大きく短縮することに成功しています。また、その結果として従業員の負担も軽減しました。
均一の品質を保てるようになり、進捗管理も安定すれば、生産数に応じた工期の計算など生産管理をトータルで行いやすくなることは見逃せません。
無駄な作業や時間のロスを減らすことで工場の稼働率も高まり、事業の幅を一層に拡大できることもメリットです。
生産計画を正確にプランニングして顧客へ提示できることも強みです。
自動車部品の製造を行っているD社では、デジタル電源を活用したアーク溶接における溶接ビートの仕上がりやスパッタ問題の改善といったニーズのために、溶接ロボットを導入しました。ロボットシステムによる溶接再現体制が確立された結果、溶接不良や手直しの手間が減少し、作業効率が全体的に向上しました。また作業員の負担が軽減し事業としての余裕も生まれています。
自動車のボディ用小物部品の製造を請け負うE社では、定置スポット溶接機を使った手作業による溶接加工を行ってきました。しかし生産性の向上や省人化の促進を目指して溶接ロボットを導入したところ、導入後の結果として生産性が約6倍に向上し、人件費についても80%の削減に成功したそうです。また、溶接作業の品質も高められたことで生産管理をトータルマネジメントしやすくなりました。
例えば大型の部品を溶接しなければならない場合、人力で行うには負担が大きいこともあります。また、長時間の作業が従業員にとって負担になることも少なくありません。
溶接ロボットであれば大サイズや高重量の部品でもスムーズに取り扱えるようになり、作業時間も圧縮できるため、従業員の負担を軽減して事故のリスクも減らせます。
従来の立体形状に対するスタッド溶接は人の手による作業が必要であり、溶接に使う器具による負担や、作業時の火花による火傷といった悪影響も架台でした。そこで垂直多関節ロボットを導入したところ、結果的に女性作業員でも溶接ラインで活躍できるようになり、単に作業者の負担が軽減しただけでなく女性参加も実現しました。また生産速度が4.4倍になって不良発生率も4分の1に低下しています。
F社では日常的に重たいワークを作業員が手作業で位置決めしたり溶接したりといった業務を行っており、品質向上や工期短縮を目指して溶接ロボットを導入しました。導入後は作業工程の大部分を自動化できるようになり、作業員の負担も軽減できたことで働きやすい環境づくりが進みました。また、制度の高い溶接を再現できるようになったことで作業のやり直しといったリスクも軽くなっています。
溶接ロボットの導入によって工数や作業時間を短縮できれば、それだけ生産コストを削減できます。また、汎用性も考慮したロボットを導入することで、単に溶接を行うだけでなく、その他の作業についてもトータルでレベルアップを目指せることはメリットです。
ただし、コストメリットの最大化には事前のシミュレーションが欠かせません。
鉄道車両用の部品を製造しているG社では、従来のスポット溶接作業に定位置式を採用しており、大サイズの溶接では4人の作業員が必要でした。しかし溶接ロボットとロボット管理システムを導入したことで、作業の大半をシステム化することに成功しており、必要な作業人員の数も4人から0.5人にまで低下しています。また負担のなくなった人が次の業務へスムーズに進めるようになりました。
鉄道車両用の部品を製造しているH社ではかつて熟練技能者による手作業の溶接作業を行っていましたが、若手社員でも高品質な溶接作業を行えるようにとロボット導入を決めました。これにより作業スピードが大幅に向上して生産コストが抑えられた他、若手従業員でも作業へ従事できるようになったことで、熟練技能者の育成コストまで合わせて抑えられたことはポイントです。
溶接ロボットの導入には、事前に初期コストを確認するだけでなく、定期的なメンテナンスにかかる費用などランニングコストについても試算しておかなければなりません。
また、ロボットは事前に設定されている内容しか作業に反映できないため、実際の現場で活用するにはティーチングを行える人材の育成や確保が必須です。
作業品質が均一になるため、設定段階で誤差や不具合が生じている場合、不良品が量産されることもデメリットです。