数ある溶接機の中でも定番のアーク溶接。その作業では、高温で有毒なヒュームが発生するなどの危険性からも、人の手作業ではなくロボットでの導入が注目されています。
アーク溶接用のロボットは、他の溶接用ロボットに比べてやや小型です。
アーク溶接は、アーク放電と呼ばれる強烈な光と紫外線を放出しておこなう作業で、高温となることからもゴーグルと作業服で防護する必要があります。それでも火傷してしまう事があるほど。さらに、金属が蒸気化したヒュームは人体に有害。そうしたことからも、人の手でおこなうよりもロボットを使って作業する会社の方が多くみられます。
鉄鋼、アルミニウムやチタンなど、ほぼすべての金属の接続ができ、鉄骨フレームや建設機械、自動車、鉄道車両、航空機、船舶といった大型機械の製造工場で使用されています。
大きな工場では複数のアームが別々の作業を担当しておこなっている風景もみられます。穴や傷などの損傷部分を溶接で埋めていき、ヤスリやグラインダーで表面の凸凹を整えます。
アーク溶接は、空気中の放電を利用しての接合方法で、有資格者が作業前にティーチングし動作プログラムを設定します。
接合では、接合する金属同士の間に電極となる溶接棒や金属ワイヤーを入れて接触させ、引き離すことでアーク放電を発生させます。それによって最高2,000度近い高温に。その熱で金属をすばやく溶かし接合します。
アーク溶接ロボットは、マニピュレーター、コントローラー、プログラミングペンダントで構成されています。マニピュレーターを構成するエンドエフェクタに装着している溶接トーチによって、さまざまなケースでの溶接が可能になります。
データの保管と通信はコントローラーで、データ作成・変更・修正はプログラミングペンダントでおこないます。また、プログラミングペンダントでティーチングも可能です。
製造現場でのロボット需要が高まり、アーク溶接ロボットなどを使った溶接工程の自動化・ロボット化が進んでいます。
アーク溶接ロボットは様々なメーカーから販売されており、その価格は数百万円ほどで、用途によって価格に差があります。
溶接ロボットの導入には、システムの仕様・構築まで対応できるSIerがおすすめです。
KUKAではクライアントのニーズや作業環境、ワークなどに合わせて様々な溶接ロボットを提供しています。最大リーチ3,100mm、最大可搬重量6~22kgなど、ニーズに応じた仕様を追求していくことが可能です。操作性を追求しつつ、クライアントの低コスト化ニーズにも配慮できるようタスクごとの溶接ロボットを比較検討できることは強みでしょう。
独自のコンサルティンによって導入前から導入後までワンストップで対応します。
川崎重工ではアーク溶接用ロボットとしてBAシリーズとRAシリーズを展開しており、ケーブル1本で溶接機とロボットを接続できるため、導入までスムーズに行えることが特徴です。設置方式も床置きと天吊りの2種に対応します。
また、アーク溶接の品質を向上させられるよう様々なソフトウェアやハードウェアのもオプション展開されており、クライアントのニーズや作業環境に合わせたカスタマイズが可能です。
神戸製鋼所では溶接ロボットとして「ARCMAN」シリーズを展開しており、アーク溶接ロボットとして「MP2式」や「A60」といった製品が提供されています。
クライアントのニーズに合わせて、溶接に特化したロボットの他にも、溶接電源や周辺装置、溶接材料などアーク溶接に関する様々なメニューを提供していることもポイントです。
なお、トラブル発生時も速やかにサポートしてくれます。
ダイヘンではアーク溶接に関連したソリューションとして、「シンクロフィード溶接システム」と「コールドタンデム溶接システム」といったシステムを提供しています。また、具体的な製品としても可搬重量ごとに複数のロボットが用意されており、さらに7軸ロボットやアーク用センサといったシステムもラインナップされていることがポイントです。
協働ロボットとしての開発にも力を入れており、作業員の安全面にも配慮しています。
パナソニックではアーク溶接ロボットとして、溶接電源を融合した「TAWERS WGⅢ/WGHⅢ」と、フルデジタル溶接電源を別に用意する「GⅢ」といった製品が展開されています。また、溶接電源融合型ではスタンダードモデルの他に、スパッタ発生量を従来比99%削減したハイエンドモデル「Super Active TAWERS」も提供されており、高電流450Aのスピード溶接やアルミのアーク溶接なども効率的に行えることが特徴です。
日鉄溶接工業では幅広い分野やクライアントがアーク溶接ロボットを導入して、業務効率化を進められるよう、多目的小型アーク溶接ロボット「NAVI-21MP」を開発しました。ロボット本体やコントローラーなどの各重量が約11kgという軽量化が実現されており、複数のウィービングパターンの適用や、溶接作業を行いながらリアルタイムの溶接施工条件の変更といった作業もスムーズに行えます。
産業用ロボットメーカーであるファナックでは、アーク溶接ロボットとして「ARC Mate 100iD / M-10iD」や「ARC Mate 100iC / M-10iA」といった製品を複数展開しています。設置形式も床置きや天吊り、傾斜角など複数のパターンから選択できるようになっており、可搬重量や動作範囲など各種条件を照らし合わせながら、自社の導入目的に適したアーク溶接ロボットを検討することが可能です。
不二越は日本各地にサポート拠点を展開している産業用ロボットメーカーであり、アーク溶接ロボットに加えて周辺機器や関連ロボットシステムなど様々な製品を提供しています。
アーク溶接ロボットとして「NB/NV」シリーズがラインナップされており、アームにはアーク溶接ケーブルが内蔵されている上、最大リーチ1402~208mmの6軸制御によって多分野の溶接ニーズや作業環境に対応可能です。
安川電機では自動車業界をはじめとして、幅広い業界で小物から大サイズのワークまで様々なニーズに合わせたアーク溶接ロボットを提供しています。溶接ロボット本体だけでなく、溶接電源やポジショナといった周辺機器についても自社開発した製品をラインナップしており、作業環境や現場をトータルでプロデュースできることが強みです。
なお、ロボットをクラウド管理できる「MOTOMAN-Cloud」も特徴です。
アーク溶接とは「アーク放電」という放電現象を利用した溶接技術であり、産業分野において一般的に活用されている溶接加工です。
溶接電源から2つの電極へ電圧をかけ、各電極の間で放電現象が起きると同時に強力な光と熱が発生します。アーク放電では場合によって太陽の表面温度を超えるほどの熱量が生じ、あらゆる母材を溶融可能です。また、アーク放電の熱によって溶接を行うため「アーク溶接」という名称が用いられています。
アーク溶接は活用する電極のタイプによって「消耗電極式溶接」と「非消耗電極式溶接」の2種類に大別することが可能です。また、それぞれのタイプの中でも、さらにシールドガスや電極の素材といった条件によって内容が細分化されています。
電極として溶接棒やワイヤなどを活用したアーク溶接であり、文字通り溶接を続ける中で電極が消耗されていることが特徴です。
なお、消耗電極式溶接は「被覆アーク溶接」や、シールドガスを利用する「マグ溶接・ミグ溶接」など複数の種類があります。
溶接に用いる電極金属の芯線に被覆材(フラックス)をかぶせて溶接を行うアーク溶接です。アーク放電の熱によってフラックスが熱分解されることで、シールドガスが発生するため、別途シールドガスを利用する必要がありません。
電極には母材と同材質のものが利用され、原理的に作業員の手作業で行われる溶接法であるため「手溶接」とも呼ばれる溶接技術です。風の影響を受けにくく室内外のどちらでも行えます。
アーク溶接の際に溶けた金属の影響で溶接不良が起きないよう、接合部分に空気を遮断するためのシールドガスを使うアーク溶接の一種です。ミグ溶接ではシールドガスとしてアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを使用しており、ステンレスやアルミ合金などを対象としたアーク溶接が可能となります。
放電電極が溶けていくため消耗電極式溶接の一種としても知られており、針金状の溶接ワイヤが自動的に供給されるため「半自動溶接」とも呼ばれます。
ミグ溶接と同様に、アーク溶接の作業時にシールドガスを利用する溶接方法です。不活性ガスを活用したミグ溶接に対して、マグ溶接ではシールドガスに炭酸ガスとアルゴンガスを混合させたガスや、炭酸ガス単体を利用することが特徴です。これにより、マグ溶接は「炭酸ガス溶接」という名称で区別されることもあります。
なお、炭酸ガスと化学反応を生じるアルミなど、非鉄金属の溶接には不向きです。
非消耗電極式溶接とは、文字通り電極が消耗せずに、別途溶加材となる溶接棒を利用するアーク溶接です。
非消耗電極式溶接には一般的にタングステン電極が用いられ、電極ではアーク放電のみが発生します。
電極にタングステンを使用し、溶加材として溶接棒を使用する非消耗電極式溶接です。また、シールドガスとして不活性ガスを利用するため「不活性ガス溶接」と呼ばれることもあります。
鉄だけでなくステンレスやアルミなど様々な金属の溶接が可能となっており、溶接作業時の金属粒子(スパッタ)が発生しにくいことはメリットです。
なお、交流電源や直流電源など母材の種類によって条件を選択することも特徴です。
電極と母材の間にプラズマアークを発生させて行う非消耗電極式溶接であり、電極にはタングステン電極が利用されます。熱集中性の良い溶接であり、歪みが少なく、ビート幅の狭い高速溶接が可能です。また、アークの指向性が優れておりスパッタの発生もありません。
溶接機そのものはティグ溶接よりも高額になりますが、ランニングコスト自体は安価になりやすいといった特徴があり、自動溶接に採用されています。